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本学作業療法学科の濱口豊太教授らが人工知能による脳卒中片麻痺患者の手指運動麻痺の重症度判別システムの商品化に成功しました

ニュース

2019/09/17

大学院保健医療福祉学研究科リハビリテーション学専修の濱口豊太教授らは、赤外線カメラで手指の運動を解析するシステム (開発コードFahrenheit, 特許No. 6375328) を開発し、2019年9月6日に竹井機器工業株式会社より市販されました。詳しくはこちらから(pdf 1MB)
また、濱口豊太教授らは、この装置を用いた人工知能システムの開発研究に取り組み、この度、研究論文が医工学領域の国際誌International Journal of Medical and Biological Engineering電子版に掲載されました(2019年9月12日,DOI: 10.1007/s40846-019-00491-w)。この論文は同誌の年間トップ20に選出されてオープンアクセスとなりましたので、どなたでも無料で閲覧することができます。

研究の概要

従来から脳卒中後の運動麻痺の重症度は医師や療法士によって目視で評価されてきました。この方法は簡便で即時的に評価できますが、動作範囲や動作速度を客観的に表現することができないことから、患者だけでなく治療者自身も運動麻痺の改善を詳細に分析することが困難でした。


そこで、今回の研究では、東京歯科大学市川総合病院の協力を得て、脳卒中患者24名を対象とし、Fahrenheitで測定した脳卒中片麻痺患者の全指屈曲と全指伸展の2動作のデータから、手指の最大関節角度と最大角速度を指標とした運動麻痺重症度を自動判別するための人工知能を作成し、その正診率を検証しました。人工知能の作り方は次の(1)〜(4)の通りです。


(1)脳卒中患者の手指の伸展と屈曲の動作をFahrenheitで測定しました。
(2)同じ患者の手指の運動麻痺の重症度を3人のベテランの理学療法士と作業療法士が判定しました。
(3)実験した(1)と(2)のデータを機械に学習させるために機械的に1000倍に増幅しました。
(4)増幅させたデータを機械学習させてAIを鍛えました。


鍛えたAIに運動麻痺の重症度がわからないようにして600人の患者のデータを入力して判定させました。すると、AIは約87%の正解率でした。ちなみに、3名のベテランの理学療法士と作業療法士に患者の動作をビデオ判定させた場合に3名とも重症度が一致するかどうかを調べたところ、その一致率は85%でした。


一般的に、このような画像による人工知能の正診率が80%を超えれば、その能力は良好とされ、人間のアシスタントとして活用できるとされています。しかし、命に関わるがん細胞の画像診断などでは限りなく100%に限りなく近い正診率を求められ、日々、人工知能システムは鍛えられています。当学で開発されたAIシステムもさらに検証を重ねて、今後のリハビリテーションに役立つ装置として研究を進めていくことになります。
特に、Fahrenheitは患者に指を開閉させてみるだけで重症度を判別できることから、リハビリテーションを行っている患者に評価の時間と身体的負担を少なくできます。また、評価にかかる時間が少なくなれば、治療者は患者の診療にさらに注力することができるようになるでしょう。


本研究は埼玉県立大学倫理委員会(承認番号27083)および東京歯科大学市川総合病院倫理審査委員会(I15-71)の承認を得て行われました。