本文へスキップします。

【参】メインイメージ(理事長、学長メッセージ)
メインイメージ
H1

2021年度 入学式 学長式辞

2021年度 入学式 学長式辞



式辞

新入生およびご家族の皆様、保健医療福祉学部および大学院研究科への入学を、埼玉県立大学の教職員と学生を代表して、心よりお祝い申し上げます。

この度の入学式は、新型コロナウイルス感染状況が未だ終息に至らず、学科・専攻や大学院ごとに分散した会場で、ご家族のご列席もご遠慮いただいての開催となりました。
言うまでも無く、入学式は、皆さんやご家族、また大学にとって大切な式典であります。
このため、皆さんや参列者の健康を守る事に加えて、人々の健康と福祉に貢献する人材育成と学術の発展に寄与するという本学の使命を考慮し、感染拡大の防止を第一として、このような形での式となりました。ご理解をいただきますようお願い申し上げます。

また、ご多忙にもかかわらず、ご祝辞をいただきました埼玉県知事 大野元裕 様、埼玉県議会議長 木下高志 様、越谷市長 高橋努 様に厚く御礼申し上げます。

新入生の皆さんは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックと言う大変困難な事態にもかかわらず、目標を見失うことなく、難関を突破し今、ここに集っています。皆さんの努力に敬意を表すると伴に、これから一緒に学び、未来を創造する仲間として活動できることを大変嬉しく思います。

本学は1999年に、看護、理学療法、作業療法、社会福祉の4学科で構成された保健医療福祉学部で設立され、2006年には健康開発学科を設置致しました。さらに、2009年に大学院研究科修士課程を、2015年には博士課程を開設して、学部から大学院までの一連の高等教育課程が完成致しました。
開学以来、教育の柱として専門職連携教育を先駆的に取り入れ、その教育手法と教育研究の成果を、国内のみならず世界に発信しております。2015年には、陶冶、進取、創発からなる大学の基本理念を制定致しました。専門職連携教育を柱とする教育方針と基本理念の制定により、本大学の建学の精神が形作られたと考えております。
本学は、2019年に創立20周年を迎え、次の20年に向けた歩みを始めております。新入生の皆さんと一緒に歩みを進めたいと思います。

ところで、皆さん、新型コロナウイルス、いわゆるCOVID-19の感染拡大、パンデミックは、私たちに何をもたらしたのでしょうか。
ご存知のように、我々人類は過去にパンデミックを2回経験しています。14世紀のペスト、約100年前のスペイン風邪であります。そして今回の2019年、年末からのCOVID-19です。
過去の2回は、治療薬やワクチンも開発されず終息までに長い時間を要し、多くの死者と社会構造の混乱と変化をもたらしました。これに対してCOVID-19はどうでしょう。人と物のグローバル化により一瞬にして感染は世界に拡大しましたが、2020年1月には、原因ウイルスを特定しました。今では、ゲノム配列まで解析し、インターネットで情報が公開されています。ウイルス特定から数ヶ月後には、感染対策が明らかになり、1年もたたぬうちに複数の有効なワクチンの開発と量産を実現し、科学の力と科学者同士の連携により、ウイルスとの戦いに打ち勝とうとしています。過去の2回のパンデミックとは全く違う科学的進歩が病原体に対して優位に立っています。大変素晴らしいことです。

一方、翻って、COVID-19、パンデミックが私たち一人一人や社会に何をもたらしたかを考えると、個人や社会の陽と陰、善と悪、寛容と不寛容、個人と全体、協調と分断、利他主義と利己主義、自由と監視、デジタルとアナログ、バーチャルとリアル、富裕と貧困、平等と差別など、相反する言葉が思い浮かびます。同時に、人間とはどうあるべきか、社会とはどのようにあるべきなのか、という基本的問題を考える機会を与えてくれたように思います。
ここでは、これらについて詳細な討議をすることはしませんが、皆さん、この一年間を振り返って見てください。自分自身の中に問題提起がなされることと思います。

デジタルとアナログ、バーチャルとリアルについて少し考えてみましょう。
緊急事態宣言が発出されて、自粛を余儀なくされ、自宅での生活や仕事を強いられた時に、SNSやインターネットで、人とつながること、連携することなど、ニューノーマルライフ、新しい生活や仕事のスタイルが提案されました。このことにより、むしろ対面で向き合い直接話をすること、人と人が直接関わらなければ解決できないこと、直接会ってつながる、連携することの重要さを改めて知ったように思います。例えば、現場でウイルスと戦っている医師や看護師などの医療職、自宅まで食事を運んでくれる配達員、子ども食堂を支援している方々、その活動は、みんなリアルでアナログです。

本学は、昨年4月当初より学生の入校を制限しました。授業は即座にオンラインに切り替え、基本的な教育の質を担保することができましたが、このことにより、対面による実習授業の必要性を実感し、デジタルとアナログ、バーチャルとリアル、両方が必要であることを改めて思い知らされました。
このパンデミックから、私たちは、デジタルやバーチャルの利便性や合理性、有用性に加え、アナログでリアルな、連携と他人のために尽くす利他主義の重要性を学びました。

本学で学ぼうと集った皆さんに伝えておきたいことがあります。皆さんは、今、ウイルスとの戦いの中で、患者さんのために、弱い人々のためにリアルに活動をしている保健医療福祉の専門職をめざし、本学で学ぼうとしているということです。自覚をして頂きたいと思います。

そして、本学に入学した保健医療福祉を学ぶ学生として、最初に学び、実行すべきことは、COVID-19を科学的に正しく理解し、感染しない、感染させない行動をすることです。
飛沫防止のためのマスクの正しい着用、手洗い、3つの密を避けるなど、感染防止対策を徹底してください。具体的にいいます。皆さんはこれから毎日、食堂、あるいはテラスや教室で友達と一緒にお昼をとることがあるでしょう。食事中はマスクを外すため、感染リスクが非常に高くなります。
「食事をしながらのおしゃべりはしない」ということを今ここで宣言してください。各自、声に出さずに心で唱えてください。(・・・・・・・)ありがとうございます。おしゃべりは、食後にマスクを着用し、友達との距離を充分確保した上で楽しんでください。

本学の建学の精神は、保健医療福祉の専門職間の連携、人と人とがつながるための知識と技術を修得するために、多様な価値観を尊重し自らを律し、先達に学び、協働により新たな価値を創造するという基本理念に基づき行動することを求めています。これは、今この国難に求められている行動規範とも言えます。

本学には、北海道から沖縄までの日本各地、及び海外から学生や教職員が集まっています。教員の専門分野も保健医療福祉領域のみならず、物理学、生態学、宗教学、さらには芸術など、多彩です。学内の教育設備は、埼玉県の支援により充実しております。埼玉県立大学と教職員を十分に活用し、それぞれの志を全うしてください。
本学教員職員は、皆さんの志を全うするために全力で支援致します。

本学に入学したことで、一つの目標が達成されたことになりますが、目標は、達成されると新たな目標ができます。目標はつきることはありません。
埼玉県立大学で学ぶことのプライドを持ち、志を全うすることを期待し、私の式辞と致します。

2021年4月2日

埼玉県立大学学長 星 文彦
本日は、入学おめでとうございます。