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平成31年度 入学式 学長式辞

平成31年度 入学式 学長式辞

平成31年度の大学・大学院入学式における学長式辞です。

新入生および御家族の皆様、保健医療福祉学部および大学院研究科への入学を、埼玉県立大学の教職員と学生を代表して、心よりお祝い申し上げます。
また、ご多忙にもかかわらず、ご列席いただきました埼玉県知事 上田清司様、埼玉県議会議長 齊藤正明様をはじめ、ご来賓の皆様に厚く御礼申し上げます。

新入生の皆さん、入学試験の手応えはいかがだったでしょうか。私たち教員は、本学での学修への意欲と準備性を備えた学生に来ていただくために、慎重に検討を重ね、出題や面接を行いました。その期待に応えてくださった皆さんをここに迎え、これから一緒に学び、新しいものを創造する仲間として活動できることを大変嬉しく思います。

本学は共生社会の構築に寄与することを目的に、1999年に、看護、理学療法、作業療法、社会福祉の4学科で構成された保健医療福祉学部で設立され、2006年に健康開発学科を設置しました。大学院研究科は2010年に修士課程を、2015年には博士課程を開設して、学部から大学院までの一連の高等教育課程が完成しました。そして、この3月には開学20年を迎えました。

開学以来、教育の柱として専門職連携教育を先駆的に取り入れ、その教育手法と教育研究の成果を、国内のみならず世界に発信しています。さらに、2015年度からは、陶冶、進取、創発からなる大学の基本理念と、大学歌を制定しました。基本理念の3つの言葉はやや難解ですが、大学生活の中で皆さんなりに意味や内容を考えてみてください。そのことが在学中や卒業あるいは修了後における皆さんの活動を豊かにするものと思います。

さて、ここで、皆さんの新しい生活と学びに向けて、いくつかアドバイスをしたいと思います。

この半世紀ほどの間に、保健医療福祉領域の学術や実践は爆発的発展を遂げています。膨大な知見の蓄積と技術革新が人類史上かつて無いほどのスピードで進行し、現場での実践のみならず、人間に対する見方や価値観が大きく変わってきましたし、これからも変わっていきます。その結果、この分野で現在必要とされる知識や技術を、大学在学中に、教員がすべてを教えたり、皆さんが身につけたりすることは不可能となりました。また、せっかく身につけた知識や技術も、数年を経ずに更新を余儀なくされます。
そのような状況に対応して、専門職教育そのもの研究が進展し、それを受けて教員も、在学中に学生へ何を教え、何を教えないか、を常に考えています。
そのために大学教員はカリキュラムを組み立て、学修内容をシラバスで示し、それにもとづいて成績評価を行います。
しかし注意していただきたいのですが、皆さんの主体的、能動的な学びがなければ、十分な学修は望めません。大学は、教員から“教えられた”ことよりも、自ら“学んだ”ことを積み重ねてゆく場です。
一方、偉大な先人が築きあげた思想や科学の大系を学ぶ必要があります。これなしでは、大学での学修は浅薄なものになってしまい、未来への洞察を生みません。
さらに大事なことは、先人達の知的遺産のみでは解決できない課題が、今の世界には充ち満ちていることです。高齢化する世界や日本、および埼玉県の保健医療福祉をどうするのか、などの大きな枠組みの問題から、病気や貧困、ハラスメントなど社会のひずみの中で、不安や恐怖にさいなまれる目の前の人に、どのように語りかけ、手をさしのべたら良いのかなど、十分な解決策がいまだに見つからない課題は無数にあります。
それらに向き合うのは皆さんです。先人が残した学術の蓄積を意味する、知の巨人の肩の上に乗って、遠くの未来へまなざしを向け、解決策を見つけていただきたい。未来は皆さんしか創りだせません。

ところで、この大学構内には、多くの美術作品が展示されています。折に触れて絵画をみつめ、彫刻に手を触れ、問いかけてみてください。
また、本学は学生のための国際交流事業をアジアやオセアニア、ヨーロッパの大学と実施しています。多くの卒業生が国際協力機構などを通じて海外で活躍しています。皆さんも海外に目を向け、グローバルに活躍していただきたい。
さらに、本学には、北海道から沖縄までの日本各地、及び海外から学生や教職員が集まっています。教員の専門分野も保健医療福祉領域のみならず、物理学、生態学や宗教学など、多様です。
バックグラウンドが異なる多くの人と、挨拶を交わし、知り合い、議論し、感動を分かち合う機会を通じて、人間性を高め、朝ご飯を毎日しっかり食べ、充実した学生生活を送ることを願っています。
それは、皆さん自身はもとより、埼玉県をはじめとする社会全体にとっても貴重な財産です。このような埼玉県立大学を皆さんが十二分に活用し、大きく成長されることを祈り、私の挨拶といたします。

 

平成31年4月2日

埼玉県立大学長 萱場 一則