“理学療法の重要性とその認知度が浸透してほしい”
その気持ちから基礎研究を日々楽しんでいます
埼玉県立大学の大学院を選んだきっかけはなんですか。
研究機関としての環境が行き届いているからです。私はマウスなどの小動物を用いた研究を行っておりますが、理学療法領域で動物実験を行える環境はそうありません。さらに日本の教育研究機関では初号機となる機器があるなど、研究活動を推進させるに魅力的な設備が数多く揃っております。
また、本学に在籍されている先生方の教育的資質が非常に高いことは勿論、留学含め外部の研究機関・研究者と接する機会を推進していることも最大の魅力です。他分野領域の研究者と話し合うことは良い刺激になるだけでなく、思いがけない所で自身の研究発展に繋がることがあります。研究的思考を積極的に培うことができる本学で学びたいと思い、入学を決意いたしました。
現在どのような研究をしていますか。
私は、日本学術振興会特別研究員として、変形性膝関節症と呼ばれる疾患について研究しております。超高齢社会を迎える本邦において、多くの高齢者が膝に痛みを抱えて健康な日常生活を送ることが困難になっておりますが、その原因こそが変形性膝関節症なのです。関節の表面は骨よりも少し軟らかい関節軟骨に覆われておりますが、日々蓄積される負荷によって関節軟骨がボロボロになり、やがて膝関節全体が変性し本疾患が引き起こされます。どういった荷重のかけ方や関節運動で変形性膝関節症が生じるか、また、どうすればその発症を予防することができるのか、私はそのメカニズムを理学療法士としての観点から研究しております。
大学院での学びや研究を、今後どのように活かしていきたいですか。
本学での学びを糧に、教育的研究者の立場から日本の理学療法分野ならびに研究領域の発展に貢献したいです。理学療法とはスポーツ障害に悩まされるアスリート、手術後の患者さん、日常生活で痛みを訴える方を対象にリハビリする職業ですが、医学・薬学領域と比べると医療としての重要性がそれほど世に認知されておりません。この理由として、研究で得られた科学性を臨床現場に応用する、いわゆる“橋渡し”が十分に実施されてきていないことが挙げられます。私はこの“研究データと臨床現場でのギャップ”を埋めるために、教育的研究者の立場から理学療法および研究領域の指導・育成に携わることができればと思います。