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2017/04/04
新入生の皆さん、入学おめでとうございます。学長の萱場一則です。埼玉県立大学の教職員と在校生を代表して、心よりお祝いを申し上げます。ご列席の御家族の皆様にも、お慶び申し上げます。また、ご多忙にもかかわらずご列席いただきました埼玉県知事上田清司様、埼玉県議会議長小林哲也様、埼玉県病院事業管理者岩中督様を始め、ご来賓の皆様に厚く感謝申し上げます。 新入生の皆さんは、編入学・社会人入試、推薦入試、一般入試、大学院入試など、多様な入学試験を経て入学されました。それぞれ試験の手応は如何だったでしょうか。私たちは、本学での学修への意欲と準備性を備えた学生に来ていただくために、慎重に検討を重ね、出題をしました。その期待に応えてくださった皆さんをここに迎え、これから一緒に学び、新しいものを創造する仲間として活動できることを大変嬉しく思っています。 本学は共生社会を築くための人材育成を目的に、1999年に、保健医療福祉学部4学科で設立され、現在は学部5学科と大学院博士課程を有する大学となりました。開学以来、教育の柱として特に専門職連携教育を先駆的に取り入れ、本学で開発した教育手法と教育研究の成果を、国内のみならず世界に発信しています。さらに、平成27年度より、陶冶、進取、創発からなる大学の基本理念と大学歌を制定しました。基本理念の3つの言葉はやや難解でありますが、大学生活の中で皆さんなりに意味や内容を考えてみてください。そのことが在学中や卒業後における皆さんの活動を豊かにするものと思います。 さて、ここで、皆さんの新しい生活と学びにむけて、3つほどアドバイスをしたいと思います。 最初に、皆さんはこれから講義や実習を通じて、実に多くのことを学修しなければなりません。この半世紀ほどの間の保健医療福祉領域の学術や実践は“マッシュルーム”と例えられる爆発的発展を遂げています。膨大な知見の蓄積と、それに伴う技術革新が人類史上かつて無いほどのスピードで進行し、人間に対する見方や考え方、価値観、そして、現場での実践が大きく変わってきましたし、これからも変わっていきます。その結果、保健医療福祉の分野で現在必要とされる知識や技術を、学部の4年間、あるいは大学院の5年間の講義や実習などにより、教員がすべてを教えたり、皆さんが身につけたりすることは不可能となっています。また、せっかく身につけた知識や技術も、数年を経ずに更新を余儀なくされます。 そのような状況に直面し、教員も、学部教育で何を教え、何を教えないか、卒業後の生涯教育へどのようにつなげていくか、大学院ではどの部分に焦点を絞って学生と一緒に研究を進めてゆくか、を常に考えています。 そのような認識のもとに本学では、学部入学直後から始まる科目であるヒューマンケア論などで用いられる経験学習を重視しています。この学習方法では、患者さんや障害を持った方などの、支援を必要とする方々や地域住民などとの対話を通じて、彼らの体験や思いに触れます。さらにそれらを学修者である皆さんが受容し、理解し、熟考し、それをもとに新たな理解や展開を構築していく、ということが繰り返し求められます。 そのためには、偉大な先人である、孔子、デカルトやカントなどの思想大系、ガウスや関孝和、アインシュタイン、あるいはワトソンとクリックらが積み重ねたサイエンスの体系、を学ぶ必要があります。これなしでは、経験学習は非常に浅薄なものになってしまい、十分な学修は望めません。 さらに大事なことは、先人達の偉大な知的遺産のみでは解決できない課題が、今の世界には充ち満ちていることを知ることです。なぜいまだに、エイズやインフルエンザなどの感染が世界規模で起こるのか、高齢化する埼玉県の保健医療福祉をどうするのか、などの大きな枠組みの問題から、病気による不安や恐怖にさいなまれる目の前のヒトに、どのように語りかけたら良いのか、なぜヒトは健康に悪い生活習慣を続け、それを改善する行動を起こさないのか、など、皆さんが日常業務で直面するのであろう身近な疑問まで、様々な課題への解決策がいまだにありません。 先人が生きた時代には無かった、あるいはあってもそれほど重大とは考えられなかった課題もたくさんあります。それらに向き合うのは皆さんです。先人の言葉にあるように、知の巨人の肩の上に乗って、遠くの未来を見渡し、解決策を見つけていただきたい。未来は皆さんにしか見渡すことが出来ません。 次に、朝ご飯を食べましょう。保健医療福祉の現場では、実習や仕事が一旦始まれば、昼食はおろか夕食も食べられる保証はありません。一方、エネルギー補給なしで乗り切れるほど甘くはありません。そのような厳しい状況は、今日は来ない、大丈夫、などという、皆さんの、希望的観測とはお構いなしにやってきます。明日からの学修と未来の活動を見据えて、朝ご飯を食べる習慣をつけましょう。 3つめですが、挨拶をしましょう。相手が挨拶してからではなく、皆さんから挨拶をしましょう。はにかみや謙譲、控えめにみられたい、などの理由から挨拶を返してくれない教職員や先輩もいますが、かまわず挨拶をしましょう。 これにはもう一つの理由があります。皆さんには海外に目を向け、学生時代のみならず卒業後もグローバルに活躍していただきたいと思います。本学は多くの卒業生が海外で活躍しています。 そこで知っていただきたいのは、世界の多くの地域では、挨拶は人間関係を決定する大きな要因となることです。挨拶をしないことは、謙譲や控えめといった美徳ではなく、往々にして、敵意の表れ、と見なされます。挨拶の習慣をつけましょう。 ところで、この大学には、絵画や彫刻、現代アートなどの多くの芸術作品が展示されています。建物自体も芸術作品です。折に触れて絵画やオブジェをみつめ、彫刻や造形に手を触れ、問いかけてみてください。皆さんの心の中に何かを呟いてくれるかもしれません。 また、本学は、北海道から沖縄までの日本各地、及び海外から学生や教職員が集まっています。多くの人と知り合い、議論し、感動を分かち合う機会をつうじて、人間関係を築いてください。 さらに、皆さんが、社会活動を通じて地域住民とつながり、また、運動場、情報センターや学内のインターネット環境などの本学の財産を活用し、自ら考え、学修し、充実した学生生活を送ることを願っています。 それは、皆さん自身はもとより、埼玉県をはじめとする社会全体にとっても貴重な財産になる、と私は信じています。このような埼玉県立大学を皆さんが十二分に活用し、大きく成長されることを祈り、私の挨拶といたします。
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