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作業療法学科・鈴木貴子助教の論文「バーチャル・リアリティを用いた新しいリハビリテーション法の模索」が「雑誌NeuroReport」に掲載されました

研究活動

2018/12/11

バーチャル・リアリティを用いた新しいリハビリテーション法の模索【鈴木貴子 助教】

感覚フィードバックの時間的ギャップによって運動野の興奮性が高まる

複数の感覚情報のフィードバックに時間的なギャップを生じさせることによって脳の興奮性が高まることを、埼玉県立大学保健医療福祉学部作業療法学科の鈴木貴子助教、同学科の濱口豊太教授、東京家政大学健康科学部リハビリテーション学科の鈴木誠教授の研究グループが明らかにしました。本研究で使用したバーチャル・リアリティシステムは、将来リハビリテーションのトレーニングに応用できる可能性があります。米科学誌NeuroReport(電子版)に掲載されました。
(※NeuroReportは、神経科学の分野に傑出した国際的な査読付ジャーナルです。 )

Suzuki T, Suzuki M, Hamaguchi T. Corticospinal excitability is modulated by temporal feedback gaps. NeuroReport 2018; 29(18): 1558–1563.
https://journals.lww.com/neuroreport/Fulltext/2018/12020/Corticospinal_excitability_is_modulated_by.7.aspx

研究内容

人が正確な運動を行うためには、目で見た感覚(視覚)や手の位置に関する感覚(固有覚)などの複数の感覚情報を時間的に精度良く脳内で処理する必要があります。この研究では、バーチャル・リアリティによって人工的に感覚情報のフィードバック時間にギャップを生じさせた場合に、正確な運動に関与する脳の運動野の興奮性がどのような影響を受けるかを調べました。 実際の指の運動とバーチャル・リアリティ画像に時間的なギャップを生じさせた場合、固有覚の情報は指の運動と同期して脳内にフィードバックされますが、視覚の情報は遅れて脳内にフィードバックされることになります。実験では、400 msの時間的ギャップを生じさせて目標位置まで指を運動する課題(図)を行った場合に、ギャップがない時よりも運動野の興奮性が高まることが分かりました。また、時間的ギャップに適応することに伴って、運動野の興奮性が低下しました。これらの結果は、複数の感覚情報のフィードバックにギャップを生じさせることによって脳の運動野の興奮性が高まることを示唆しています。 リハビリテーションの分野では、神経系の障害によって視覚と固有覚の感覚情報の伝達にギャップを来した対象者に対して、反復的な運動練習が広く行われています。本研究で使用したバーチャル・リアリティシステムは、将来リハビリテーションのトレーニングに応用できる可能性があります。なお、今回の研究で使用したバーチャル・リアリティシステムは埼玉県立大学が特許を持っています。

 

左手バーチャル・リアリティ画像ヘッドマウントディスプレイ

図   ヘッドマウントディスプレイで見たバーチャル・リアリティ画像

バーチャル・リアリティシステム。(特開:2017-196099,特許査定,公立大学法人埼玉県立大学)左図の手のうち、白色が指の運動、肌色が目標位置を示している。

 


 

本研究は、日本学術振興会 科研費 26750226,17K13094,18H03133の助成を受けて行われました。