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第49回埼玉県医学検査学会で、検査技術科学専攻の学生2名が『埼臨技奨励賞』を受賞しました

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2022/04/12


1.学会概要

第49回埼玉県医学検査学会
会期:令和3年12月5日(日) ~ 令和4年1月10日(月)
会場:大宮ソニックシティ(現地開催12月5日のみ)およびWeb開催

  第49回埼玉県医学検査学会は、飯田眞佐栄大会会長(株式会社アムル)の下、学会テーマ「前進」、サブテーマ「新・時代への発信」をかかげ、Webと講演のハイブリット開催となり、現地参加322名、Web参加851名を迎え盛会裏に終了しました。一般演題は全てオンデマンド配信となりましたが、昨年は感染対策で縮小開催のために行われなかった学生発表についても2年ぶりに実施されました。
  なお、大会の抄録は、
http://sairingi.com/academy/49ken/index.html
  からご覧いただくことができます。

2.『埼臨技奨励賞』概要

  一般演題99題のうち、学生演題は本学からの5演題を含む7題の発表がありました。その中から、スライドの構成、発表パフォーマンスに優れた3名が『埼臨技奨励賞』に選考され、その内の2名は本学学生の受賞となりました。表彰式は令和4年3月15日に大宮ソニックシティで、埼玉県臨床検査技師会臨時総会の中で執り行われました。

●受賞

受賞者:安田 理乃(埼玉県立大学保健医療福祉学部 健康開発学科 検査技術科学専攻4年)
演題名:下水環境における黄色ブドウ球菌の分離とMRSAの経時的変動の解析
共同演者:西沢 匠央(検査技術科学専攻4年)、園田 康雄(検査技術科学専攻4年)、岸井 こずゑ(検査技術科学専攻・准教授)、村井 美代(検査技術科学専攻・准教授)

●受賞

受賞者:小田 航(埼玉県立大学保健医療福祉学部 健康開発学科 検査技術科学専攻4年)
演題名:穿刺液検査(体腔液)の標準化を目指した細胞算定制度の基礎検討
共同演者: 岡田 茂治(検査技術科学専攻・准教授)、小関 紀之(獨協医科大学埼玉医療センター)

*学生の年次、教員の職位等は受賞当時のもの。

3.研究概要及び受賞者、研究指導教員からのコメント

●下水環境における黄色ブドウ球菌の分離とMRSAの経時的変動の解析

≪研究概要≫
  日本におけるMRSAの分離率は、AMRアクションプラン策定後緩やかに減少しているものの、2020年の目標値20%を大幅に上回っており依然として高いため、健常保菌者を含めた包括的な調査が求められます。そこで、生活排水である下水から分離された黄色ブドウ球菌に占めるMRSA分離率変動を解析し、現在のMRSA蔓延状況の把握を目的とした新たな疫学調査法としての可能性を検討しました。
  本研究では、埼玉県内の下水流入水から黄色ブドウ球菌分離に成功し、MRSAが占める割合が1年間の平均で12%であったことを報告しました。この結果から下水からのMRSA分離率のモニターは、下水道の処理区域居住者の全体像把握に有用であると推測されました。

≪安田 理乃さんコメント≫
  この度は『埼臨技奨励賞』という栄えある賞をいただき、大変光栄に存じます。
  この賞は、何度も失敗と試みを繰り返し、少しずつ積み重ねた成果の賜物であると感じています。そして、共に研究に励んだ仲間たちと、熱心にご指導してくださった村井先生をはじめとする先生方、国立感染研究所の方々のお力添えが無ければ、成しえなかったと思います。
  今後もこの受賞を励みに、日々精進してまいります。ありがとうございました。

≪村井 美代准教授コメント≫
  安田理乃さんは、微生物学研究室で西沢匠央さん、園田康雄さんと協力して、卒業研究として下水から黄色ブドウ球菌を分離し、多剤耐性の黄色ブドウ球菌であるMRSAの割合を隔月で1年間にわたり求めました。学生達はその後、得られた菌株について独立に解析を進めて卒業研究をまとめましたが、現在はそれらの研究成果をさらに発展させるべく、国立感染症研究所の薬剤耐性研究センターと共同研究を進めています。
  安田さんは研究全体の背景や目的をよく理解し、的確にスライドにまとめ、研究結果をわかりやすく説明できたところが素晴らしかったと思います。受賞、おめでとうございます。

●穿刺液検査(体腔液)の標準化を目指した細胞算定制度の基礎検討

≪研究概要≫
  臨床検査における標準化は、検査精度の向上、施設間差の是正、ガイドライン基準値の設定など臨床的意義への寄与がとても高いことが認識されています。しかし、現在多くの臨床検査で標準化が確立されている中、特発性細菌性腹膜炎(SBP)の診断ガイドラインとして、臨床的意義の高い穿刺液検査法(体腔液)の標準化は現在も進んでおらず、使用する計算盤や染色液、検体希釈率、細胞分類法などの多くの問題があげられます。
  本研究では、ガイドラインの診断基準値に基づく細胞数算定について、診断基準値近辺での検査精度を主体とした膨大な労力を伴う基礎検討を行いました。そして染色法と希釈率を組み合わせた計算盤の精度、区画による算定誤差の証明、新たな誤差要因としての注入量や注入方向、乾燥などについて明らかにしました。
  これらの研究結果は標準検査法を推進する上で、とても重要な報告となるものであり、穿刺液検査法の標準化を推進する一躍を担う研究成果として期待されます。

≪小田 航さんコメント≫
  この度は、第49回埼玉県医学検査学会において、埼臨技奨励賞を賜り大変光栄に思います。そして、ご指導いただいた岡田先生、小関先生をはじめ、学会の関係者皆様方に厚く御礼を申し上げます。
  本研究は、特発性細菌性腹膜炎(SBP)の診断として臨床的に意義のある、穿刺液検査(体腔液)の標準化を目指した基礎検討であり、患者さんや現場の医療者の方々を意識した研究デザインと学会発表を心掛けました。高いご評価をいただけたことを大変嬉しく思います。
  今後とも、臨床に寄り添った研究に携われればと考えています。ありがとうございました。

≪岡田 茂治准教授コメント≫
  小田さんは、一般臨床検査学の講義と実習で学ぶだけでなく、学問的興味をもって自ら非常勤講師を務められている小関先生と私に実習後もディスカッションを求め、本研究の根幹である臨床検査の標準化の必要性について高い興味を持っていただきました。そして本研究を行うことにつながりました。
  本研究の実施には膨大な労力と時間が掛かりましたが、よく最後までやり抜きました。そして小田さんオリジナルのわかりやすい発表も高い評価につながったものと考えます。
  埼臨技奨励賞を受賞されたことを心よりお喜びいたします。そして小田さんの持つ高いパフォーマンスに感銘するとともに、これからのさらなるご活躍に期待いたします。
 

令和4年3月15日開催の第49回埼玉県医学検査学会「各賞授賞」表彰式にて、
 埼臨技奨励賞を受賞した安田さん(左)と小田さん(右)。 中央は埼玉県臨床検査技師会会長 神山 清志氏。